お知らせ
「往還回向由他力」
兵庫教区 神戸中組 徳本寺 津 守 秀 憲
浄土真宗は命終わってお浄土に参るみ教えです。阿弥陀さまに抱かれお浄土に参り、仏さまとしてのさとりを開きます。しかし、それで終わりではありません。還相の菩薩としてお浄土からこの迷いの世に還(かえ)ってきて阿弥陀さまとのご縁を導き、結んでいく活動をしていくのだと説かれます。
そして「往還回向由他力」。お浄土に往生するすがたとお浄土から還ってくるすがた、これらはみな阿弥陀さまのはたらき「他力」によるものであると示されます。
人間はいつの時でも未来が問題です。この命終わっていくとき、私はどこにいくのだろうか、暗黒の未来が待っているのだろうか、と考えたら我々はただただ恐怖におののいていかなければなりません。阿弥陀さまは「あなたを光り輝くお浄土に参らせ、麗しき仏とするよ」と仰ってくださいます。
この命は死んで終わりの命じゃない、お浄土へと続く未来がある、仏さまとなる未来がある。そうお聞かせいただくと、命終えていく時に向いていく方向が変わるのではないでしょうか。
山口県に深川倫雄和上という僧侶がいらっしゃいました。浄土真宗では学識が深く、教えを導く指導の立場にあられる僧侶を「和上」と尊敬しお呼びします。深川和上は最高学位「勧学」の和上さまでありました。
平成6年、本願寺の御正忌報恩講法要の特別講演で深川和上がこのようにお話しくださいました。要約、抜粋して記載します。
「2年前に心筋梗塞で病院に運ばれた。集中治療室に入ると看護師さんがお医者さんに私の容態を伝える声が聞こえてきた。
「血圧は最高30最低16です!」しばらくすると「足の先にチアノーゼが出ています!」
チアノーゼが出ているか…、これは死へのプログラムの第1歩、次は瞳孔が開き、脈が不規則になり、そして死に至る。
チアノーゼが出ていると耳にした時、「もうこの命は長くないな」と感じた。
倒れる前にお酒を飲んでいたからこのまま眠ってしまい、その内に心臓が止まるのだろう。だとしたら私がものを思う時間はあと5,6分ぐらいだろう。このわずかな時間しかないとすれば何を思って過ごすか。それはこれからのことだ。これからどうするか、間もなくお浄土に参ります。仏さまのおさとりを開きます。おさとりの世界は凡夫の私には分からない世界だが、親鸞さまから聞いておる。お浄土に行って仏さまのさとりをいただいたならば還相の菩薩になる。この迷いの世界に還ってくる。
私はこの度の人生、黒い衣を着て黄色い袈裟をつけ、若い坊さんを集めて一緒に勉強のまねごとをした。あれはよかった。今度、お浄土の菩薩となったうえからは迷いの国に出てきたら、どこのどなたにお出会いするか分からんが、また黒い衣を着て袈裟をかけて勉強をしよう。そうするとまた若い坊さんが集まって勉強をするだろう。そのような光景を想像している内に眠ってしまった…」
深川和上は一命をとりとめ、療養の後に現場復帰をして以上のようにお話しくださいました。
この命の終わった先がある、と聞かせていただくと我々は臨終のときであっても未来を向いていくことが出来るのですね。お浄土に参る、そしてこの世に還ってくる。それらは私が頑張って成し遂げていくという話ではありません。阿弥陀さまが「必ずそうさせる」と今、私に向けてはたらいてくださることを南無阿弥陀仏のなかにお聞かせいただくのです。
津守秀憲
1985年6月28日生
神戸中組徳本寺住職
本願寺派布教使
布教使課程指導員を経て本願寺布教専従職員在職中
本願寺派輔教
